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| 江戸庶民の心をとらえていった題名納札にも、札を通じていつとはなしに仲間意識が芽ばえ、おたがいの親睦や意志の交流の場を求めて、札の交換や品評をする江戸のサロンともいうべき納札交換会が発生してきた。会合の席も、当初は私宅や寺院が多かったが、次第に贅沢になり派手になって、立茶屋や料亭などが利用されるようになった。 こうした納札交換会は、会場が贅沢になればなるほど、交換される札もそれに比例し、いろいろ工夫され、豪華なものになっていった。折しも江戸庶民の絵画の代表となった、浮世絵版画がますます隆盛な動きを示してきたため、その木版画の彫りや摺りの技法が、納札交換札にとりいれられた。 創成期の題名納札は、姓、名、屋号などの題名文字だけの、墨一色の単純な札であったが、交換納札になると、前述の浮世絵版画の影響もあって、構図、色彩など絵画的要素が多分にとりいれられ「文字」と「絵画」と融合した「納札交換札」という江戸の庶民版画としてのオリジナリティを形成していった。そしてその納札交換札の制作工程は、浮世絵版画のそれと少しも変らず、むしろ企画者として活躍した江戸戯作者の、粋、洒落、はり、を基調とした奇抜な発想が、浮世絵師の斬新で卓越した構図を生み、しかも御家流から発生したバイタリティ溢れる江戸文字を融合させ、躍動するイメージを刻々と造形する彫師の刀を生かし、自由で美しく調和した色彩を駆使する摺師の刷毛とバレンさばきを助長し、すばらしい作品を制作していった。現代の広告宣伝印刷業界にたずさわる、アートディレクター、イラストレーター、デザイナー、コピーライター、印刷会社といった人びとの、総合制作の先駆をなしたのである。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||