桂史戯言 vol.01「ロンドンパブ」
酒を飲むだけの場所なら、本当は家でも丘の上でも原っぱでも、どこでもいいのだろうが、元来酒飲みというのは寂しがり屋が多いせいなのか、人のいるところで飲みたがる。飲んでいるところを人に見せたがる。陽気になっている時や、ちょっとばかり暗くなっている時、彼らが好んで入り浸たる“酒場”という所は、酒と一緒にその時代の空気や、そこに集まる人々の憂いや歓びといったもの、そして他人の元気や、時間まで飲んでいるところがある。大体陽気な酒飲みというのも“他人といないと陽気でいられない”というちょっと困ったところがあって…二葉亭四迷が「アイラブユー」を「死んでもいいわ」と訳したように、それじゃここでは「アイニードサムシングトウドリンク」を「とっても寂しいの」とでも訳しておきましょうか。人がいる事がこよなく好きな酒飲みという人種は、世界中どこの街でもいっぱいいて、そして彼らが集まる所は、その数だけいろいろなカタチがある。

その中の1つ例えばロンドンにTHE CROWNというところがあり、まさにその名前のようにビクトリア朝の外観で、そこもご多分にもれずいつも大勢の人達がハイチェアに居座っているという俗に云うロンドンパブと呼ばれるところである。ロンドンのパブでは、こちらで飲まれるような高級なスコッチウイスキーを飲っているのを見たことは余りなく。10年物が普通でちょっと格式があるところで12年物がやっとといった具合(もちろんこれはマッカランのような物のことで…)であとはやっぱり輸出用なのかとも、思ってみたりして…。ここで飲まれるのは、もっぱらギネスか「ビター」といわれるビールが主流で、これをパブで小一時間もかけてチビリチビリと飲っているて意外と倹約家の酒飲みが多いのか…』と思ってたら、実はこの中にゴードンジンなんかを、たっぷり注いで。『へぇー、英国人っ飲っていて、それを「ロンドンワイン」と称していることを、後になって彼らに教えられた。こっちへ帰ってから日本流に「ばくだん」でいこうかななんて。(ちなみにアメリカ北部ではボイラーメーカーというのでした) あっ、もう夜半に近づいてくるのでお尻が軽くなり、あっと言う間に今夜も酒場にたどり着くのでした…。(文と写真/國本桂史)


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